国立情報学研究所水野研究室様の
FactSetサプライチェーンデータベース活用術

紛争鉱物問題、二酸化炭素排出量など見えない「つながり」を把握

特定時点や変化も確認、
グローバル・サプライチェーンの分析に最適

国内唯一の「情報学」の学術総合研究所である国立情報学研究所は文部科学省所管の情報・システム研究機構を構成する研究機関のひとつで、大学共同利用機関として独自の最先端の研究に取り組むとともに全国の大学や研究機関、民間企業の共同研究のハブとしての役割も果たしている。情報社会相関研究系の水野貴之准教授は、QUICKが2015年に販売を始めた米FactSet社のサプライチェーンデータベース(DB)を利用している。DBサービスは各社ごとにさまざまな「くせ」があるが、FactSetのDBはグローバルベースでのサプライヤー、カスタマー、パートナーと競合他社(4分類13サブ分類)を使った経済的な依存関係の分析に最適だという。

投資判断にもグローバル・サプライチェーンの調査は必須に

                   水野貴之准教授

ビッグデータによる経済・社会現象の統計分析とモデル構築などが専門の研究分野だ。例えば、2011年にタイで大洪水が起こったときに日本企業の業績にも深刻な影響が及んだように、ある地域で発生した事象が国境を越えて波及しやすくなっている。15年には金融ビッグデータにより、金融危機がグローバルにどう波及するのか、企業がどのようにつながっているのかを分析した。

FactSetのDBを導入したのは、グローバルなサプライチェーンが焦点になった紛争地の鉱物を取り上げたときだ。コンゴ民主共和国および周辺国の紛争地域で産出したレアメタル(希少金属)などの鉱物が武装集団の資金源として輸出される「紛争鉱物問題」では、消費者の資金はグローバルなサプライチェーンを通じて知らないうちに紛争に加担してしまうリスクにさらされている。

同様に、英国の大手スーパーで販売されているタイ産のエビが、人身売買や強制労働など人権を侵害している業者から仕入れたものだと指摘されるケースのように、直接は原材料に入っていなくても人道的な視点やコンプライアンス(法令順守)上の問題を指摘される場合もある。消費者や企業は「モノ」にとどまらず、ありとあらゆるものを確認しなければならない。目に見えない企業のつながり、世界規模の国境を超えた供給網を調査しなければ、どの商品を購入すべきか、どの企業に投資すべきかが判断できなくなっている。

取引先企業の追跡や子会社との取引調査も容易

全世界ベースでサプライチェーンを分析する際、FactSetのDBならデータの収録期間が明らかなうえ、ある時点で特定のデータを切り出すこともできるし、時間の経過に伴う変化を追うこともできる。もちろん最新の状況も確認できる。取引先を含めた全ての企業にコードが付番してあるため、その先のデータを追うことも容易だ。

全世界の企業約3億社に対して、FactSetがカバーしているのは親会社ベースで30万~50万社だ。しかし、子会社がきちんと親会社に紐づいているうえ、子会社を介した取引も確認できる。企業は所在する国や地域ではなく類似の業種でつながっており、それがさらに違う業種とも結び付いている。コンプライアンスに問題があるといった報道などをデータに反映すると、コンプライアンスに問題のある企業と結びつきが強い業種に分類される企業全体を抽出できると考えている。

企業への情報開示依頼の代わりなど様々に活用

見えないモノの企業のつながり、資金の流れを調べることはますます重要になるだろう。紛争鉱物問題でもFactSetのDBを利用すれば、個々の企業に情報開示を依頼したり、政府のレポートに頼ったりしなくても紛争鉱物を利用していない企業を探すことができた。他にも、例えば二酸化炭素(CO2)排出量が多い発電所に携わる企業を抽出することも可能だ。取引先や投資先の調査や分析などでFactSetのサプライチェーンDBは様々に活用することができる。

サプライヤー、カスタマー、パートナーと競合他社(4分類13サブ分類)を使い
経済的な依存関係を分析

導入研究室の所属機関のプロフィール

国立情報学研究所は、情報学という新しい学問分野での「未来価値創成」を目指す我が国唯一の学術総合研究所として、2004年の設置以来、ネットワーク、ソフトウェア、コンテンツなどの情報関連分野の新しい理論・方法論から応用までの研究開発を総合的に推進しています。また、大学共同利用機関として、学術コミュニティ全体の研究・教育活動に不可欠な最先端学術情報基盤(CSI:サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ)の構築を進め、学術情報ネットワーク(SINET5)の運用とともに、最先端の学術情報基盤や学術コンテンツ、及び、サービスの提供事業を展開しています。全国の大学や研究機関はもとより、2016年度新設の「金融スマートデータ研究センター」をはじめとした民間企業との連携や、さまざまな社会活動との協力を重視した運営を行っています。

研究所名 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所
研究所名(英文) National Institute of Informatics
所長 喜連川 優
所員 職員(平成28年4月現在)
所長、教授、准教授、職員等:140名
特任教授等:37名
特定有期・有期・短時間雇用職員:183名
所在地 東京都千代田区一ツ橋2-1-2

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