鎌倉投信の鎌田氏 「いい会社」を見つけ、発展を投資で後押し

 鎌倉投信は、国内株中心の公募投資信託「結い2101」を設定・運用し、個人投資家などに直接販売している。ファンドの組み入れに選ぶのは「いい会社」だけ。鎌倉投信代表取締役社長の鎌田恭幸氏は、会社設立時に「金融を通じて日本を元気にしたい」という想いで、創業メンバーと徹底的に議論したと振り返る。「結い2101」は高いパフォーマンスを得るよりも、これからの日本にほんとうに必要とされるいい会社の発展を投資することで後押しすることを目指す。

重視する点の一つは社員の働きぶり

 「いい会社」とは、会社の経営理念が社員に浸透し、顧客に理解され、社会に必要とされる会社だ。評価基準は35項目程度あるが、それをまとめると「人」、「共生」、「匠」の3つ。「人」は人財を活かせるかということ。社員に活気があるのか、障碍者や女性、ニートやフリーターを本業で雇用しているか、などだ。「共生」は循環型社会を創ること。例えば林業再生や環境リサイクル、地域雇用などに取り組む会社かどうか。「匠」は世界に誇るオンリーワンの技術やサービスを持つかだ。

 アナリストのレポートを読むよりも、会社を訪問する。経営者の話も聞くが、より重視するのは社員の働きぶりだ。仕事にやりがいや生きがいを感じているか、現場で実際に話を聞く。「誰でもよいから、その辺にいる人から話を聞いていいよ」などと、経営者が構えずに言える会社は期待がもてる。そこまではできなくても、インタビューの場を設けるなど対応してくれる会社は、社員との信頼関係が構築できている一つの証ともいえる。

一点に優れた会社を探す

 日本ではモノとサービスは行き渡っており、モノとサービスを増やしても価格競争に陥るだけだ。さらなる発展や成長には、社会的な課題を解決する要素が必要になる。同じ業種のなかでの財務内容や株価の相対的な企業比較よりも、雇用の多様性や、心と体の健康、地域社会への貢献などといった社会的課題を評価項目としている。世の中で求められる分野が変化しており、マーケットのセグメンテーションとして一般に用いられる「業種」はあまり重視していない。

 全ての評価項目を網羅的に総合評価しない。どちらかといえば一点に優れた、突出した会社を探す。内容(実質性)も見極める。例えば障碍者雇用率が高くても、軽度の障碍者に単純作業だけを依頼しているのではなく、食品トレー大手のエフピコのように、重度の障碍者が使用済みトレーの選別など事業の中核であり利益に直結する業務を担当している会社かどうかの見極めが大切だ。社会的責任投資(SRI)で企業の社会的責任(CSR)経営に関する一律のアンケート調査からスコア化するといった、形式的で網羅性、いわゆる総合力を求めるものとは目指すものが違う。

 「結い 2101」の投資基準に照らしたいい会社であっても、会社の発展段階によっては借入依存度が高い会社や赤字の会社など、ばらつきもある。例えば、創業から間がない会社に投資する場合には、リスクが高いため、安定した「100年企業」などと組み合わせる。そうしてポートフォリオ全体の収益性を高めたり、価格変動リスクを抑制したりする。分散させることで、財務面でリスクがある会社でも、「この会社がなくなったら日本の将来はどうなるのか」という視点で、信託期間が無期限という長い時間軸で社会に必要な企業の成長を応援することができる。無期限の公募投信は、投資する会社の事業サイクルに合わせたリスクマネーを供給できるというよさがある。

直接の対話が大事

 2008年11月に現在の役員4人で創業した。株式を短期で売買するのではなく、「いい会社」を応援して育てる枠組みを作りたかった。直接、お客さまに販売することで、信頼関係を築くことができる直販というスタイルにした。公募にしたのは不特定多数のお客さまと関わりたかったためだ。マネーゲームと投資は違う。投資は事業活動の発展や成長を反映し、株価が上昇し、その結果として投資家にリターンがもたらされるという「実態」がある。投資を通じて日本をよくし、社会の役に立っていることをお客さまに実感してもらう仕組みを作りたかった。

 お客さまとの直接の対話が大事だと考えており、1年に1回、「結い 2101」の決算・運用報告を兼ねた「受益者総会」を開催している。数字の結果だけでなく、投資先の会社をより理解していただきたいためだ。現在の投資先55社のうち、前回は20社ほどが自社の商品を展示。毎回、テーマを決めていい会社の経営者に講演を依頼しているが、昨年は、会社の経営者だけでなく、入社2,3年目の若手社員にも会社のよさや課題を語ってもらった。昨年、今年と全国から700~800人ほどのお客さまに参加いただいた。

 運用報告の一環として、「いい会社訪問」も概ね2カ月に1回のペースで実施し、お客さまに投資先と直接、触れあえる場を設けている。ここでは、会社の財務指標に表れない、社会価値の創造も投資のリターンの一部として実感してもらいたいためだ。この哲学に共感していただいているお客さまは少なくなく、目標としているリターン5%程度(年率,信託報酬控除前)もいらないという声も寄せられた。初めて投資をするお客さまの比率も15%程度と比較的高い。

よい企業風土やガバナンスは、ルールの押しつけからは生まれない

 「いい会社」は声高にアピールしない。「いい会社」の経営者は株価や業績など数字の話よりもむしろ、自分の会社が何のために存在しているのか、想いの原点やビジョンをしっかりと投資家に語ることで、信頼が芽生え、結果的に長い投資につながる。完璧な会社はないため、成長の過程でマイナスの要素が出ることもある。そういった場合でも、よりよく改善の努力をすれば、投資家との信頼は揺らがない。問題が起こった時の姿勢が大事だ。

 例えば、2013年秋にヤマト運輸で扱うクール便の温度管理の品質問題が発覚した際、ヤマトホールディングスの社長から「現場の社員の責任ではなく経営の問題」との真摯な反省と改善に向けた強い姿勢を綴った手紙をいただいた。経営者は株主ではなく、どれだけ社員と向き合うのか、何かあったときの優先順位を常日頃から考えるべきだと思う。

 ルールの押しつけや管理型の企業風土やガバナンスのなかでは、なにも生まれない。むしろ、ルールといった枠があると、モラルハザード(倫理の欠如)が起きる。管理型組織の風土のもとでは、よい商品はできず、創造性はなくなる。ルールのないなかでも主体性や責任意識が浸透し、自然と規律が守られるのが最もよい。とりわけ過去の成功体験を持つ日本の大企業にとって、社員一人ひとりの主体性と創造性を発揮できる企業風土への改革は、次の成長に向けた大きな挑戦だ。

鎌田恭幸(かまたやすゆき)氏のプロフィール

鎌田恭幸 鎌倉投信株式会社 代表取締役社長
1965年島根県生まれ。日系・外資系信託銀行を通じて25年にわたり資産運用業務に携わる。株式等の運用、運用商品の企画、年金等の機関投資家営業等を経て、外資系信託銀行の代表取締役副社長を務める。2008年11月に鎌倉投信(株)を創業。社長として事業全体を統括する。

「結い2101」(2015年11月30日現在)

設定日 2010年3月29日
純資産総額 21,092百万円
基準価額 16,617円
組入れ会社数 55社
顧客数 14,585人(うち、「定期定額購入」は8,814人)

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