米中間選挙後の国際情勢 2015年為替動向を読む

株式会社QUICKは2014年12月4日、日経メディアマーケティング株式会社と共同で、事業会社の財務担当者向けのセミナーを開催しました。 株式会社双日総合研究所副所長チーフエコノミストの吉崎達彦氏より、 「米中間選挙後の国際情勢・2015年為替動向を読む」と題し、 講演いただきました。主な内容は以下の通りです。

講演要旨

●米中間選挙で与党大敗も、米経済は回復継続

11月の米中間選挙は与党・民主党が大敗し、約2年の任期を残すオバマ大統領のレームダック(死に体)化が進むとみられている。これは「今まで通りの機能不全」であって、米経済にとって必ずしも悪材料ではない。全体としては回復基調が続くだろう。ちなみに、2016年の米大統領選に、民主党の本命候補であるヒラリー・クリントン前国務長官が出馬しない確率は3、4割と考えている。一般論だが、大統領が2期8年を務めた後、政権交代がなかったことは第二次世界大戦後では1988年の一度しかない。

●世界経済にとってリスク要因は新興国、とくにブラジル経済

ロシアやブラジル、インドなど新興5カ国(BRICS)の勢いは失われ、再び新興国の通貨動向に警戒が必要だ。なかでもブラジルは景気低迷と物価高で苦しんでいるうえに、2016年のリオデジャネイロ夏季五輪の開催というイベントを控えている。
ブラジルレアルに先行き不透明感が強まっており、メキシコやコロンビア、ベネズエラといった中南米の産油国も不安を抱えている。これらの国々に融資しているスペインやポルトガルを経由して、ユーロ圏の金融不安につながることも考えられる。また、ブラジルの通貨不安は、「フラジャイル5(脆弱な5カ国)」と言われる財政基盤が相対的に弱い国々であるトルコや南アフリカなどの通貨にも飛び火しかねない。

●日本経済の緩やかな回復のため、120円超でも円安は放置

米金融専門誌「インスティテューショナル・インベスター」による全米エコノミストランキングで、35年間連続第一位の米調査会社エバコアISIのエド・ハイマン会長は、日銀の黒田東彦総裁が10月に市場の意表を突いて追加緩和に踏み切ったことを高く評価。中国や欧州中央銀行(ECB)に緩和圧力をかけ、世界的な株高につながったという。日本経済は円安を通じて回復に向かい、米国も1ドル=120円超の円安を容認するだろうと見ていた。
円高は通貨価値が高まるということで、国富(ストック)を増やす。しかし、いまの日本経済に大切なことは円安で収入(フロー)を増やすことだ。投資リターンを高め、外国人観光客を増やすなど、おカネの巡りをよくすることが重要だ。日本政府が現在の円安状態を放置することは、日本経済の緩やかな回復基調を継続させるために、十分に経済合理性があることだと見ている。

講師プロフィール

seminar2_img1吉崎達彦氏
㈱双日総合研究所副所長チーフエコノミスト
1960年富山県生まれ。1984年一橋大学卒、日商岩井㈱入社。
広報誌『トレードピア』編集長、米ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会代表幹事秘書・調査役などを経て企業エコノミストに。日商岩井とニチメンの合併を機に2004年から現職。関心領域は日本経済、貿易動向、米国政治、外交・安全保障論など。

著書に『アメリカの論理』、『1985年』(新潮新書)、『オバマは世界を救えるか』(新潮社)、『溜池通信 いかにもこれが経済』(日本経済新聞出版社)など。産経新聞「正論」、毎日新聞「時論フォーラム」、北日本新聞「時論」などのメンバー。テレビ朝日『サンデープロジェクト』やテレビ東京『モーニングサテライト』、文化放送『くにまるジャパン』などでコメンテーターを務める。ウェブサイト『溜池通信』(http://tameike.net )を主宰。 2013年度フジサンケイグループ「正論」新風賞受賞。